Microsoft Clarityとは、Microsoftが無料で提供しているアクセス解析ツールで、2026年5月13日からはAIの回答に自社ページが引用された回数まで見られるようになっています。さらに2026年8月3日、その引用を「ブランド名を含む問い合わせ」と「含まない問い合わせ」に分ける機能が追加されました。
この記事でわかること
- 画面は4つに分かれている: ボットの来訪・情報取得・引用・AI流入は別々の数字で、1本のファネルではありません。
- 見る順番が決まっている: 引用されたページ、AIが使った問い合わせ文、AIからの流入の3つだけ毎月見れば足ります。
- 測れる範囲に線がある: 引用はMicrosoftとBingを使うAIの範囲、流入はChatGPTなど5サービスの公式サイト経由と、対象が別々です。
正直に書くと、当社もこの画面を開いて手が止まりました。表記が英語中心で、日本語表示に切り替えても訳語が直感的につながらず、どの数字を毎月追えばいいのか判断できなかったからです(実務知見)。同じところで止まる人が多いはずなので、この記事は機能紹介ではなく「どこを見て、何を監視するか」に絞って書きます。
ClarityのAIデータは4つの観測窓に分かれている
ClarityのAI関連データは、ボット来訪・情報取得・引用・AI流入という4つの別々の窓です。
同じ利用者を1本の線で追いかけるファネルではありません。ここを取り違えると、いくら画面を眺めても数字が噛み合いません。実際には次の3段が上流から下流へつながっており、そこに「人が実際に来た数」だけが別系統でぶら下がっています。
上の3段は、AIのクローラーがページを取りに来た(ボット活動)、AIが回答を作る前の情報検索でそのページを取得した(グラウンディング)、回答の出典として実際に引用された(引用)という順です。Microsoftの公式解説も、ボットのアクセスは「取りに来た」ことを示すだけで、回答に使われた保証にも引用された保証にもならないと明記しています。
一方でAI流入は、ChatGPTなどのAIサービス上のリンクを人がクリックしてサイトへ来たセッションを、参照元から判定したものです。引用が増えても流入が増えるとは限りませんし、その逆もあります。この2つを同じ「AIの成果」として1つの数字にまとめないでください。
なお、AI引用は検索順位と違ってドメインの強さに縛られにくく、後発のサイトでも取りにいける領域だと当社は考えています(アイダイム分析)。だからこそ、無料で計測できる手段が用意された意味が大きくなります。
画面が空なら設定不足|ドメイン認証の3方式
引用のデータを見るには、プロジェクト管理者によるドメイン所有権の確認が必要です。
ここが済んでいないと、画面を開いても数字は出ません。公式ドキュメントが挙げている方式は次の3つで、いずれか1つで構いません。1ドメインにつき1回きりの作業です。
- サイトにClarityのトラッキングコードを設置する
- Google Search Consoleを接続する(画面が遷移し、サインインして対象ドメインを選ぶ)
- Bing Webmaster Toolsを接続する(同じくサインインして対象ドメインを選ぶ)
Search ConsoleかBing Webmaster Toolsを選んだ場合、所有権が確認された時点で自動的に認証が完了し、引用のダッシュボードが使えるようになります。到達経路は「Dashboards → AI Visibility → Citation」です。
もう1つ、ボットの来訪状況を見る画面(AI Bot Activity)だけは前提が別です。こちらはFastly・Amazon CloudFront・Cloudflare・Azure Front Door・Akamaiといった配信基盤の接続が必要で、既定では使えません。ただしWordPressサイトの場合、最新のClarity用プラグインを使っていればこの連携は既定で有効になります。
Q. 設定した直後なのに引用が0件です。壊れていますか。
A. 故障ではない可能性が高いです。引用データはサイトが解析された時点から表示され、意味のある傾向が読めるまでには数日から1週間ほどかかります。0件が続く場合は、ドメイン認証が完了しているか、そもそも対象のAIに取得されるだけの内容が公開されているかを先に疑ってください。
設定が終われば、あとは数字の読み方だけの問題になります。
どの数字を見て何を判断するか
画面には7つの要素が並びますが、判断に使うのは引用されたページ・問い合わせ文・AI流入の3つです。
残りは背景を掴むための補助と考えて構いません。表記が英語のままで迷いやすいので、何の数字なのかを先に一覧にしておきます。
| 画面の表記 | 何の数字か | 読めること・打つ手 |
|---|---|---|
| Page citations | 自社ページがAIの回答に引用された延べ回数 | 総量の増減を見る。回答内での目立ち方は含まない |
| Share of authority | 全ドメインの引用に占める自社の割合 | 競合との相対位置。計算に癖があるため単独で追わない |
| Grounding queries | AIが回答を作る前に自社ページを取得するのに使った問い合わせ文 | 最重要。見出しと導入文の書き換え材料になる |
| Query Topics | 上の問い合わせ文をテーマごとに自動分類したもの | 取れているテーマと空白のテーマが分かる |
| My cited pages | 引用されたページの一覧と、その回数・問い合わせ文 | 勝っているページの型を他ページへ横展開する |
| AI referral traffic | AIサービス経由で始まったセッションの割合 | 引用が来訪につながったか。着地ページの改善へ回す |
| Trendlines | 上記の時系列推移 | 単月の値ではなく増減の向きを見る |
日本語表示に切り替えることもできますが、訳語が画面の実際の役割と結びつきにくいため、当社は英語表記のまま上の対応で覚えるほうが早いと判断しました(実務知見)。以下、判断に効く順に補足します。
Grounding queries:AIが何を探して自社に到達したかを見る
最初に開くべきはここです。AIが回答を作る前に投げた問い合わせ文が、そのまま一覧で並びます。
この文言は利用者が実際に打ち込んだものとは異なることがあると公式が明記しています。つまり、検索キーワードではなく「AIが情報を取りに行くときの言い回し」が見えます。ここに出ている表現が自社ページの見出しや冒頭文に無いなら、そこが書き換えどころです。検索順位の改善とは着眼点が違う点が、この画面のいちばんの価値です。
My cited pages:引用を取れているページを見る
引用されたページと引用回数、それに紐づく問い合わせ文が一覧で並ぶ画面です。
回数は「何回参照されたか」であって、回答内での順位や目立ち方ではないと公式が注記しています。ここで上位に来るページの共通点(定義文が冒頭にある、手順が番号付きで並んでいる、数値に出典が付いている等)を洗い出し、同じ型を他のページへ移植するのが最短です。
Query Topics:どのテーマで引用されているかを見る
問い合わせ文をテーマ別に自動でまとめる機能で、2026年7月22日に追加されました。
テーマごとに引用数と権威シェアが付き、絞り込みや書き出しもできます。
似た機能に「Topic Insights」がありますが、こちらは自分でテーマや競合を指定して機会を探すもので、方向が逆です。すでに起きている引用を分類するのがQuery Topics、これから狙う先を洗うのがTopic Insightsと覚えておけば十分です。
AI referral traffic:AIから人が実際に来た割合を見る
AIサービス上のリンクを踏んでサイトに来たセッションの割合を示す数字です。
引用の画面にも表示されますが、実体はアクセス解析側のチャネル区分で、「Referrer」カードの「Channels」タブに AIPlatform(無料のリンク経由)と PaidAIPlatform(AI内の広告経由)として並びます。
対象はChatGPT・Copilot・Gemini・Claude・Perplexityの各公式サイトからの直接の来訪です。参照元が隠れている場合はDirect(直接流入)に混ざりますし、この機能の提供開始より前のデータはさかのぼって分類され直しません。
8月3日に追加された指名/非指名の使い方
2026年8月3日の更新で、AIが使った問い合わせ文をブランド名の有無で分けられるようになりました。
追加されたのは画面の3か所です。
1つ目は問い合わせ文の一覧に付く「branded」のラベルで、どれが社名・製品名を含む問い合わせだったかが一目で分かります。2つ目は権威シェアの内訳表示で、指名と非指名それぞれのシェアが分かれて出ます。3つ目は絞り込みで、指名だけ・非指名だけに切り替えて比較できます。
読み分けの目安はこうです。指名を含む問い合わせでの引用は、すでに社名を知っている人の確認行動に近い動き。ブランド名を含まない一般的な問い合わせでの引用は、名前を知らない相手に発見されている動きです。ただし分類の対象は利用者が入力した文章ではなくAIが情報取得に使った問い合わせ文なので、「非指名=新規顧客」と断定はできません。あくまで発見寄り・想起寄りのシグナルとして扱うのが安全です(アイダイム分析)。
実務では、非指名の引用が増えているのに問い合わせが動かないなら着地ページの問題、指名ばかりで非指名がほぼ0なら、そもそもテーマの権威が取れていないという切り分けに使えます。
Q. 指名と非指名、どちらを増やすべきですか。
A. 認知を広げたい段階なら非指名です。非指名の問い合わせで引用される状態は、社名を知らない相手にテーマの担い手として選ばれていることを意味します。一方で指名の引用は、比較検討の最終段階で内容が正しく伝わっているかの点検に向きます。両方を1つの数字にまとめないことが前提です。
分けて見られるようになった以上、月次の報告でも両者を別の行として扱うべきです。
数字の落とし穴と、入れるべき人・見送っていい人
注意点は3つです。権威シェアが高く出る癖、引用と流入で対象範囲が違うこと、万人向けではないことです。
権威シェアは「自社の引用数 ÷ 全ドメインの引用数」を日ごとに計算し、自社が引用されなかった日は計算から外す仕様だと公式が明記しています。除外するぶん、広い分母で計算する方法より値が高く出ます。臨床検査でいえば、測定できた日だけを集めて平均を出しているのと同じ構造で、水準そのものを他社の数値と比べるのには向きません。当社はこの数字を絶対値では追わず、「引用が立った日数」と「向き(増えているか減っているか)」だけを見るようにしています(アイダイム分析)。
もう1つ、いちばん誤解されやすいのが対象範囲の違いです。
| 項目 | 引用(Citations) | AI流入(AIPlatform) |
|---|---|---|
| 測っているもの | AIの回答に出典として使われた回数 | AIのリンクから人が来たセッション |
| 対象範囲 | MicrosoftのAI体験と、Bingで情報取得するパートナーAI基盤(対応先の一覧は非公開) | ChatGPT・Copilot・Gemini・Claude・Perplexityの各公式サイト |
| 対象外 | 公式に明示された除外リストは無い | 検索結果や業務ツールに埋め込まれたAI機能 |
| 判定の仕組み | AI側の情報取得・引用の記録 | 参照元による分類(不明ならDirectに混ざる) |
引用のほうを「Copilot専用の数字」と説明している解説を見かけますが、正確ではありません。Microsoftは自社のAI体験に加えて、Bingを使って情報を取得するパートナーのAI基盤にも同じ仕組みが使われていると説明しており、さらに対応先を今後広げるとも書いています。ただし具体的なサービス名の一覧は公開されていないため、「ChatGPTの引用も入っている」と言い切ることもできません。分かっているのは範囲が非公開であることまでで、そこを踏まえて社内に説明するのが誠実です。
なお実務家の間では、この機能に対する評価は割れています。SEO専門家の辻正浩氏は2026年6月1日に、Bing Webmaster Toolsよりデータは多いものの参考になる範囲は限られそうだという趣旨の見方を示しています。一方で、AIが使った問い合わせ文をここまで具体的に見せるツールは他にないという評価も出ており、無料である点を評価する声が中小・BtoB界隈では目立ちます。
当社の結論は「全員に勧めるツールではない」です(アイダイム分析)。操作性は決して良くなく、一般的に普及しているとも言えません。目安は次のとおりです。
| 入れて見る価値がある | 今は見送ってよい |
|---|---|
| 記事・資料を継続して出しており、AI経由の指名が増えたか知りたい | 公開ページが数枚で、更新も止まっている |
| 有料のAI可視化ツールを検討中で、まず実データを見たい | 見る担当者がおらず、月次で誰も画面を開かない |
| Search Consoleでは説明できない流入の変化が起きている | 検索順位そのものが未着手で、先に打つ手が残っている |
見送る判断も立派な判断です。引用の「ゆらぎ」そのものをどう扱うかは「AEO対策とは?AI引用の「ゆらぎ」を測り、本当の低下を見分ける方法【2026年版】」で詳しく解説しています。
Q. 権威シェアが先月より下がりました。何かペナルティですか。
A. ペナルティの指標ではありません。この数字は自社が引用された日だけで計算されるため、引用が立った日数が変わるだけで上下します。下がったときは割合を見る前に、引用が発生した日数と対象の問い合わせ文の顔ぶれが変わっていないかを先に確認してください。
ここまで押さえたら、あとは毎月の運用に落とすだけです。
毎月これだけ見る:3つの監視セット
毎月見るのは、引用されたページ・AIが使った問い合わせ文・AIからの流入の3つだけで足ります。
全部の数字を追おうとすると続きません。
1つ目は引用されたページの顔ぶれです。先月と比べて増えたページ・消えたページを見て、消えたページがあれば内容の鮮度と、冒頭で結論を出しているかを点検します。2つ目はAIが使った問い合わせ文で、自社ページに無い言い回しが出ていればそれを見出しへ反映します。3つ目はAIからの流入で、来ているのに問い合わせが動かないなら、原因は記事ではなく着地後の導線です。
判断の基準は次のように置いています(アイダイム分析)。権威シェアの割合そのものは報告に載せず、引用が発生した日数を並べる。問い合わせ文は上位10件だけを写し、前月と入れ替わった行だけ議論する。AI流入は率ではなく実数で見る。3つとも「割合の上下」ではなく「顔ぶれの入れ替わり」で判断するのが要点です。
Search Consoleの生成AI関連のデータと突き合わせると精度が上がります。読み方は「サーチコンソールのAIモードは一律1位ではない|生成AIデータの読み方と点検手順」に、AI経由で来た人の質については「AIリファラルとは?質がCVRを高める仕組み【2026年版】」にまとめています。Gemini側の可視性を別途測る方法は「Geminiのブランド可視性を測る方法|言及・引用を計測する手順と指標」が対応します。
📌 計測の次に「AIに選ばれる中身」をどう作るかで迷ったら
→ 【栃木版】LLMO対策の教科書:AIに選ばれる検索戦略とコンサルティング
Microsoft ClarityのAI引用のよくある質問
細かい疑問をまとめました。
Q. ClarityでChatGPTの引用も分かりますか。
A. 断定できません。引用の対象はMicrosoftのAI体験と、Bingを使って情報を取得するパートナーのAI基盤とされており、対応サービスの一覧は公開されていないためです。ただしAI流入のほうは対象が明記されており、ChatGPT公式サイトからの来訪は計測できます。
Q. 引用とAI流入は結局どこが違うのですか。
A. 引用は人が来ていなくても発生します。AIの回答の出典として使われた時点で1回と数えるためで、利用者が回答を読んで満足すればサイトへの訪問は起きません。AI流入は逆に、リンクをクリックして実際に来た人だけを数えます。片方だけを見ると施策の評価を誤ります。
Q. 料金はかかりますか。
A. Clarity本体は無料です。公式も「Free forever」と明記しています。ただしボットの来訪を見る画面で配信基盤を接続する場合、ログの取り出しや転送にかかる費用は接続先の事業者から請求されることがあります。
Q. Google Analyticsだけでは代わりになりませんか。
A. AIからの流入は代替できますが、引用は測れません。アクセス解析が捉えるのはサイトに来た後の行動であり、AIの回答の中で出典として使われたかどうかはサイト側のログに残らないためです。訪問前の可視性を見る手段として、両者は役割が分かれます。
参考情報
- Microsoft Clarity公式ブログ「Branded vs Non-Branded AI Queries in Microsoft Clarity」(2026年8月3日)https://clarity.microsoft.com/blog/branded-non-branded-queries/
- Microsoft Learn「Citation Dashboard Overview」 https://learn.microsoft.com/en-us/clarity/ai-visibility/ai-citations
- Microsoft Learn「AIPlatform and PaidAIPlatform」 https://learn.microsoft.com/en-us/clarity/insights/ai-channel-group
- Microsoft Clarity公式ブログ「Citations in Microsoft Clarity Now Generally Available」(2026年5月13日)https://clarity.microsoft.com/blog/citations-now-generally-available/
- Microsoft Clarity公式ブログ「Analyze AI Citation Queries by Topic」(2026年7月22日)https://clarity.microsoft.com/blog/analyze-ai-citation-queries-by-topic/
- Microsoft Learn「Frequently asked questions」 https://learn.microsoft.com/en-us/clarity/faq

